いつもみたいに部屋に帰って
いつもみたいにお風呂を沸かして
いつもみたいにご飯を作って
(だけど心の中は、こんなにも不安でいっぱい)
いつか
いつもみたいに、玄関のドアが開いて
「、てめぇ!」
(ほら、きた)
「てめぇ、勝手に目撃者の店に行ったな?」
「知らない」
素知らぬ顔で短く答えたものの、内心は心臓がばくばく。そんなあたしの心を見透かしたように、ふんと鼻を鳴らしてずんずん近付いてくる、彼。
「しらばっくれたって分かってんだよ。若い女が水曜のこと聞きにきたって」
「……知らない。それ、あたしじゃない」
「だぁぁぁっ!勝手なことするなって言っただろ!そんなに俺たちが信用できねーのかよ!」
「……ちがうよ。そうじゃ、なくて」
たまらなくなって、頑なに俯いていた顔を上げ、涙をこらえて喉の奥から声を絞り出す。そんなあたしの顔を見て、彼もまた、思わず口を噤んで目を細める。
「あたしだって……知りたいの。あたしだって……あの人、あんな目に遭わせた犯人……」
考えただけで、思い返すだけで。あの人の無念が、身体の奥底を熱く焦がすのよ。
彼は深々と息を吐いて、しばらく整えていないその黒い髪を無造作に掻いた。
「……分かってるよ。んなことは、分かってる」
でも、な。そう言って彼は、何かを振り払うようにぱっと頭から手を離した。ただ真っ直ぐに、こちらの目を見下ろして、呟く。
「それは俺たちの仕事だ。下手にお前が手を突っ込んで……もしものことがあったら、どうする」
彼の瞳が、悲痛に揺らいで。あたしの胸に、届く。
「頼むから、二度と妙な真似はしないでくれ」
「……ごめん、なさい」
そっと瞼を伏せて、囁きながら。縋るように、彼の大きな胸に身を預ける。
今度は小さなため息を、ひとつだけついて。
「分かればいーんだよ」
そしてそのしっかりとした腕で、あたしの痛みを溶かすように。きつく、きつく抱き締めてくれた。
大好きな、あの匂いと一緒に。
My trigger in your hands