場所は都心のどこかの広い公園。うららかなあの季節はとうに過ぎたけど、新緑の映える季節にはまだ遠い。そんな日に、



「あんたいつもここで本読んでんのか?」



彼はまた来た。私はぱたんと本を閉じ、声のした方に顔を向ける。いかつい顔に警察という肩書きと背負ったこの人。ああ、今日は非番なのかな。スーツじゃない。



「はい。家に居ても窮屈ですので」
「そうか。隣、良いか?」
「どうぞ。伊丹さんは非番なのですか、今日は」
「ああ。多分今年で最初で最後の休みだろうな」
「あら、それならもっと伊丹さんのやりたいことをやるべきではありませんか?折角の休日ですのに、こんなぶらぶらしている私何かと居て。勿体無いです」
「それはあんたの言うとおりだな。でもこれといって俺には趣味とかよ、そんな大層なもん無いんだよ。だからあんたと同じで家にいても仕方ねえからこうやって当ても無く外に出て、なんでかあんたの隣に座ってる」



俺もあんたみたいに本が読めりゃあいいんだが、生憎文字は書類のおかげで飽きてるからよ。伊丹さんはそう言って、にしても今日は日差しが強えなあとぼやく。その表情を私は横から眺めて、外見にそぐわず伊丹さんはこういう人なんだなあ、とこっそり思った。



「そういえば、伊丹さんはまだ私の名前を知りませんよね」
「あー、そうだったな。俺のほうが一方的に話し掛けただけだったし」
「ふふっ。私は話し掛けていただいて嬉しかったですよ?」
「そうか?」
「ええ。では改めて、私はといいます。普通に呼んでくださいな」
「苗字は教えてくれないのか?」
「・・・・お家の事情がありますので。すみません」
「いや、いいんだ。じゃあ呼び捨てで呼ばせてもらう」
「はい」



妙で不思議な雰囲気だ、となんとなく私は感じた。伊丹さんは警察で、国家の名の下に毎日頑張って犯罪者を逮捕されている。その反面では国家の力という権力に縛られている。けど、自由なのだろう。お家の事情というものに縛られる私と違い、伊丹さんは自由なのでしょう。だから齟齬が起きて馴染まないのだ。いつだって、私はそう。



「伊丹さんは、自由に飛べる鳥ですか?」
「え?ああ、そうだな・・・・・やっぱり職業柄自由じゃねえけど、自分のやりてえと思ったことはやらせてもらってるから自由に近えんじゃねえかな」
「そう、ですか。ごめんなさい、なんだか変なことを聞いてしまって」
「別に大丈夫だけどよ。それも、なんだ。お家の事情、ってやつなのか?」



この人は、心配してくれている。いかつい表情の隙間から見える優しさがそれを私に気付かせた。ぎゅっとなぜか心が痛む。(でも、この人の優しさに縋ってはいけないのよ)



「さあどうでしょう?」
「んだよ、教えてくれたっていいじゃねえか」
「嫌ですよう。ちょっとくらい秘密や謎があったほうがいいでしょうに」
「ったく。女って皆そう言うよな」
「そういうものなのですよ。面白みがないといけませんもの」
「まあそうだけどよ」



(ごめんなさい伊丹さん。私は貴方に嘘を付きました)



「なあ、」
「なんですか、伊丹さん」
「やっぱ、何でもねえ」
「えー。言ってくださいよ、気になるじゃないですか」
「さっきのお返しだこのやろう」
「ひどいですねえ。伊丹さんの意地悪」
「るっせ」







神さま、奇跡をください
(本当のことを言えない卑怯者の私に、情けを)









拙い文章ですがお許し下さい。伊丹さんの口調がまったく分かりません。ああもう本当にごめんなさい・・・・!(裏設定とかあったんですけど、これじゃあ分からないヨ!)こんなのでも良ければお願いします。ありがとうございました!
(0512 提出)